
弁護士:湯沢 誠
2015.02.14
- 現在筆者は日弁連懲戒委員会に所属していて、処分を受けた弁護士からの不服申立(審査請求)事件や懲戒を申し立てた者から弁護士会が行った処分内容についての不服申立(異議申立)事件の審査を行っていることから、最近の懲戒事件の状況を報告した。昨年1年間に懲戒処分を受けた弁護士の数は101人で、初めて100人を突破した。司法改革による弁護士数の増加と懲戒処分を受けた弁護士の数の増加は比例している。数が増加しているだけではなく、内容も重大化しているといえる。業務上横領等の事件では金額も多額にのぼり、実刑判決を受ける弁護士もいるというのは驚きである。以下研究会で発表した事例の中から2例を紹介する。
- 証券業協会あっせん・相談センター部長の職にあった者が、同協会のあっせん委員になっていた消費金融会社の顧問弁護士について、「弁護士としての倫理観が欠如している」「ヒステリー気味な言動が見られる」などと記述した報告書を作成したが、この報告書を上記弁護士が代理人となっている民事事件の裁判において、最高裁に提出した横浜弁護士会所属の複数の弁護士が懲戒申立を受けた。横浜弁護士会では弁護士が自ら報告書を作成したものではないこと、最高裁への文書提出という公然性の極めて低い態様であったことなどから弁護士としての品位を失うべき非行とは言えないとして処分しなかったが、日弁連では、逆の結論となった。弁護士としての訴訟活動も行き過ぎは注意しなければいけないことを痛感させられた事例であった。
- みずほ証券株式会社はジェイコム株1株61万円の売り注文を61万株1円と誤発注したが、(株)東京証券取引所のシステム不具合により注文取消が出来なかったために約415億円の損害を蒙ったとして、証券会社が東証を被告として訴訟を提起した。東京地裁では証券会社の請求の一部である約107億円の賠償請求を認めた。日本の最大手の事務所に所属する証券会社の弁護士複数名は法律雑誌数誌に部外者を装って東京地裁の判決を批判する記事を掲載した。東京第一弁護士会では懲戒処分をしなかったが、日弁連では中心的に活動を行った弁護士を弁護士としての品位を損なう行為を行ったとして戒告処分とした。